太陽光パネルへの日射を建物で妨げられた場合の「受光利益」の判決

本日は昨年末に出た太陽光発電に関する判決を紹介したいと思います。

発電事業者の方はとても気になる判決だと思うので是非目を通してみてください。
自分の発電所が同じ状況になる可能性も十分あると思います。

裁判所の判断

福岡地裁判決が認定した事実は、以下の裁判所ウェブサイトで確認することが可能です。
⇒判決全文

全文読むのは大変なので簡単に解説します。

まず今回の裁判は原告の請求は棄却されています。
ただし、以下のように判示をしています。

福岡地裁判決は、「太陽光発電を行っている者は、発電設備への太陽光の受光について密接な利害関係を有するものであり、法律上の保護が及んでいないと解することは相当でないから、その者らの有する太陽光発電のための受光利益は、法律上保護に値する利益に当たると解するのが相当である」と判断しました。

被告は裁判上、「太陽光を享受する利益は観念することができず法律上保護される利益と考える余地はなく、これを認めると新たな権利の創設になりかねない」と主張しましたが、福岡地裁判決は、「受光利益は、所有権に発する正当な土地の使用収益活動のための利益として相当の客観性を備えており、法律上保護される利益として観念することができる」とし、「これを認めることが新たな権利の創設となるものでもない」と判示しています。

さらに建築物が不法行為となる判断基準を以下のように示しています。

福岡地裁判決は、「太陽光発電は、再生可能エネルギー源(特措法2条4項)を用いた発電の一つとして、近年急速に普及し始めたものであって、建築基準関係規定でも住宅地における太陽光発電のための太陽光パネルの設置と近隣の他の建築物との関係を想定した規制を設けるには至っておらず、どの程度の受光が確保されれば権利ないし利益の侵害とならないかなどの明確な基準が存在しないことに加え、電力の安定的かつ適切な供給の確保及びそれに係る環境への負荷の低減を巡る今後の社会の情勢や政策手法の変更にも影響されるから、私法上の権利といい得るような明確な実体を有するものとは認められず、受光利益を超えて権利性を認めることはできない」

「したがって、本件におけるように建物の建築行為が第三者に対する関係において太陽光の受光を妨げたからといって直ちに違法な利益侵害があるとして不法行為を構成するということはできず、受光利益を違法に侵害するものとして不法行為を構成するかどうかは、被侵害利益である受光利益の性質と内容のほか、受光を妨げる建物が建築された所在地の利用用途、周辺の地域性、侵害される受光利益の程度、侵害に至る経過等を総合的に考察して、侵害された受光利益と建物を建築する利益とを比較考量して判断すべきである」

「もっとも、受光利益の性質と内容については、上記のとおり建築基準関係規定にも規制がなく、利益として保護され得る範囲について社会的に合意の得られる基準が設けられているものではないことや、太陽光発電の性質上、発電量及び余剰電力の販売益がどの程度に達するかは不安定であることを考慮せざるを得ないから、受光利益を侵害する行為が違法であるとされるのは、法令による規制に違反する建築物によるとか、発電量を著しく減少させるなど、その侵害の程度が強度といえるような場合に限られると解すべきである」と判断基準を示しました。

建築物が全く問題がないということではなく、規制に違反していないかや侵害の程度によっては、受光利益を侵害していると判断されるという判断をしています。

これはこれで判例としては重要なものだと思っております。
20年あると何がどう変わるかわからないので自分の発電所の南側に大きな建物が建つ可能性は十分にあります。

侵害の程度などによっては不法となることもあるということを知っているだけでも交渉の時には有利になると思うので是非この判例はしっかり抑えておいてください。